ライフスタイル eyecatch_sato03

Published on 5月 18th, 2015 | by ダッド編集部

0

映画ギーク佐藤光の「ウォルト・ディズニーの約束」レビュー



この記事の執筆者は、映画ライターの佐藤光さんです。 ダッド|育児ジェントルへ、プロがエスコート

映画ライターが語る、映画「ウォルト・ディズニーの約束」感想

[2013年 監:ジョン・リー・ハンコック 出:エマ・トンプソン、トム・ハンクス]

「救済」が意味するもの

1961年・ハリウッド。ウォルト・ディズニーは、児童文学作品「メアリー・ポピンズ」の映画化権獲得のため、原作者のパメラ・リー・トラヴァースを英国から招待する。シナリオ監修の権限を与えることで、頑固者として知られるトラヴァースから映画化の承諾を得ようという心算だったのだが、彼女は脚本家や作曲家のアイデアにケチをつけ続け、なかなか契約書にサインしようとしない。関係者一同、なぜトラヴァースがそこまでの反発を示すのかがどうしても理解できず、首を傾げるばかり。実は「メアリー・ポピンズ」執筆の裏には、トラヴァース自身が幼少時代に経験した、哀しくもかけがえのない家族の物語があったのだ……。

[amazonjs asin=”B00KBLC6LO” locale=”JP” tmpl=”Small” title=”ウォルト・ディズニーの約束 MovieNEX ブルーレイ+DVD+デジタルコピー(クラウド対応)+MovieNEXワールド Blu-ray”]

1964年公開のミュージカル映画『メリー・ポピンズ』の制作背景を描いたヒューマン・ドラマ。二つの異なる時代をパラレル編集で繋ぎながら、魔法使いのベビーシッター、ポピンズの「出自」を炙り出していく。「ディズニー」の名を打ち出した邦題は集客力を考えれば決して的外れではないものの、本編を観れば一目瞭然、このお話の主人公は原作者のトラヴァースのほうだ。

トラヴァースは、腹に溜め込んだ不満を常に発散させているような「ヤな女」として登場する。声をかければ皮肉めいた言葉を突っ返し、口ごたえしようものなら会話そのものをシャットアウト。梨の実や造語、赤いもの全般には謎の拒絶反応を示す。変わり者、なんて呼び方では生易しいくらいの、共感しづらい偏屈オバサンであり、海千山千のハリウッド王ウォルトも彼女には散々振り回される。

しかしトラヴァースの過去が徐々に明らかになっていくにつれ、彼女の奇行や固執が、父親への愛憎入り混じった強い想いに起因するものであることも見えてくる。家族のことを何より大切にしながらも、精神的圧迫に耐えかねて酒におぼれ、やがて自壊していってしまった父。自責の念と共に成長したトラヴァースは、空想の物語を通し、過去に救いの手を差し伸べる。本作の原題である“Saving Mr. Banks(バンクス氏の救済)”が意味するものは何なのか?観客はトラヴァースと視点を共有しながら、その答えを見つけていくのである。

チャイニーズ・シアターにおける『メリー・ポピンズ』プレミア試写の場面、それまで誰よりも自信に満ち溢れていたはずのトラヴァースが、少女のように心許無い足取りでレッドカーペットを歩いていく。前半、トラヴァースを心の底で「クソババア」呼ばわりした観客も、ここで彼女が見せる無防備で不安げな後ろ姿には、きっと声援を送りたくなるはずだ。

言うまでもなく、事前に『メリー・ポピンズ』を観ておけば本作の楽しみも増す。しかし『ポピンズ』をまだ一度も観たことがない人がいたなら、ひとつ「本作→『ポピンズ』」の順番で鑑賞してみるのも面白いだろう。あらかじめ背景を知っておくことで、予備知識なしでは聞こえなかった音色を「チム・チム・チェリー」のメロディから掬い取ることができる……かもしれない。

ファミリー映画」のレビュー一覧

佐藤氏の過去の映画レビューはこちらから

年間200本以上の映画を鑑賞する映画ギークがオススメの映画をセレクト!

映画コンシェルジュ 佐藤光
1983年生。映像制作者・ライター。年間200本以上の映画や舞台を鑑賞し、買うCDはサントラばかり、いくら家計が厳しくともDVD・Blu-ray収集を止められない映画バカ。当の本人は「宵越しの銭っこは持たん主義」と涙目で強がっている。

ダッド|育児ジェントルへ、プロがエスコート

Tags: , , , , , , , ,



Comments are closed.

Back to Top ↑
  • スポンサードリンク




  • 厚生労働省 イクメンプロジェクト賛同企業です

    ダッド|育児ジェントルへ、プロがエスコート

  • FACEBOOK