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Published on 10月 16th, 2015 | by ダッド編集部

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(PG-12指定)映画ギーク佐藤光の「ミュンヘン」レビュー



この記事の執筆者は、映画ライターの佐藤光さんです。 ダッド|育児ジェントルへ、プロがエスコート

映画ライターが語る、映画「ミュンヘン」感想

[2005年 監:スティーヴン・スピルバーグ 出:エリック・バナ、ダニエル・クレイグ]
〈本作はPG-12指定作品ですが、R指定級のショック・シーンが散在します。予めご了承ください〉

怒りと憎しみの果てに

1972年、ミュンヘン。オリンピック選手村に潜入したパレスチナ過激派によって、イスラエル選手団11名が殺害された。時のイスラエル首相ゴルダ・メイアは、イスラエル諜報特務庁「モサド」にパレスチナへの報復を命令。諜報部員のアヴナーをリーダーとした実行部隊は、テロ事件の関係者を一人ずつ見つけ出し、始末していく。だが暗殺を繰り返し、その返報としてチームメンバーを一人、また一人と失っていく緊迫した状況の中で、アヴナーと仲間たちの精神状態も極限へと追いつめられてゆき……。

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ジョージ・ジョナスの原作小説『標的(ターゲット)は11人 モサド暗殺チームの記録』(新潮文庫刊)を、巨匠スピルバーグ監督が映像化したスパイ・サスペンス。公開当時、内容の信憑性を疑問視する声も上がったが、DVDのイントロダクションでスピルバーグ監督本人が語っている通り、たとえ100%創作だったとしても、この映画が内包するメッセージや凄味は些かも弱まるものではない。

アヴナーは確かに特殊訓練を受けたプロの工作員だが、同時に身重の妻を抱えたサラリーマンでもあり、良き家庭人だ。子どもが産まれれば何かと物入りになるだろうが、今のままの薄給ではどうなることか。そんなタイミングで舞い込んできた大口の仕事。報酬はいいし、愛するお国のために奉仕する絶好のチャンスだ。受けない理由がどこにある、と勢い込んで任務に就いたアヴナーだったが、その内容は……油断しきった標的を爆弾で木っ端微塵に吹き飛ばすという壮絶なものだった。しかも索敵活動を通してターゲットのことを探れば探るほど、相手もまた自分と同じ血の通った人間なのだという現実をイヤでも思い知らされる。国家への忠誠と誇りを抱いて始めたはずのミッション、しかしこの虚しさは一体何なのだ……愛国者として、それ以上にひとりの人間として、任務と良心の板挟みになったアヴナーの心は激しく揺れ動く。

物語の本質をより強烈に印象付けるため、原作エピソードから換骨奪胎した映画オリジナルの場面も見事な効果を生んでいる。父親不在の間にもすくすくと成長していく娘の声を電話越しに聞いたアヴナーが声を殺して泣く場面では、彼の苦悩を最小限の台詞と演技で端的に表現しているし、正体を偽ったモサド暗殺チームとPLO(パレスチナ解放機構)メンバーが隠れ家で鉢合わせする緊迫のシーン、そしてそれに続くチームリーダー同士の短くも重要な語らいは、主人公たちにとっての敵=パレスチナ人に明確な感情と「顔」を与えた。自身も東欧系ユダヤ人の血を引くスピルバーグ監督がパレスチナ側に同情的とも取れる描き方をしたことで、「スピルバーグはパレスチナ・テロリストのシンパなのか!」などという非難の声も巻き起こったようだが、全く以てナンセンス。「怒りや憎しみに任せて突っ走るな。視野狭窄に陥るな。暴力の連鎖の果てに幸せなど無い」……どんなに丁寧に描いても、理解できない(もしくは分かろうとしない)石頭はいつの世にも存在するようだ。

仕掛け爆弾による爆殺や、丸腰の相手に銃弾を叩き込む場面はショッキングで陰鬱な気分にさせられる。スピルバーグ作品にしては珍しいくらいに生々しいセックスシーンもある。爽快なスパイ・アクション映画を期待して観たらトラウマ必至の衝撃作だが、考えさせられる点や忘れ難いメッセージも多い。歴史のダークサイドに目を向けるキッカケとしては、これ以上ないほどわかり易く、インパクト大な作品といえるだろう。

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年間200本以上の映画を鑑賞する映画ギークがオススメの映画をセレクト!

映画コンシェルジュ 佐藤光
1983年生。映像制作者・ライター。年間200本以上の映画や舞台を鑑賞し、買うCDはサントラばかり、いくら家計が厳しくともDVD・Blu-ray収集を止められない映画バカ。当の本人は「宵越しの銭っこは持たん主義」と涙目で強がっている。

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