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Published on 12月 2nd, 2015 | by ダッド編集部

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映画ギーク佐藤光の「スノーピアサー」レビュー



この記事の執筆者は、映画ライターの佐藤光さんです。 ダッド|育児ジェントルへ、プロがエスコート

映画ライターが語る、映画「スノーピアサー」感想

[2013年 監:ポン・ジュノ 出:クリス・エヴァンス、ソン・ガンホ、ジェイミー・ベル]

どこへ行ってもアニキはアニキ

2031年。氷河期に突入した地球では殆どの生命が死に絶え、半永久機関で駆動する世界一周列車「スノーピアサー」に乗り込んだ一握りの人類だけが細々と命を繋いでいた。そこでは少数の富裕階級が全てを支配し、後部車両に住む貧困層の生殺与奪権を握っている。貧困層で生まれ育ったカーティスは、圧政に不満を持つ仲間たちと共にクーデターを決行。独裁者ウィルフォードが乗る先頭車両を目指して決死の進撃を開始するのだが……。

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フランスのグラフィック・ノヴェル原作“Le Transperceneige”を、韓国の鬼才ポン・ジュノが映像化した異色SF。設定だけ見れば出オチ的な凡作にもなりそうなところ、そこはジュノ監督。トレードマークのビザールな笑いを織り交ぜ、異形のデストピア世界を構築している。

そもそも地球が氷で覆われてしまった原因からして「温暖化を食い止めるために特殊薬剤を散布したら冷え過ぎちゃいました。メンゴ♪」という人を食ったようなモノ。「頭があればケツもある」社会階層を列車の構造に見立てた下剋上物語の描き方も、バカバカしいほどにカリカチュアライズされた分かり易さだ。加えて、長年の閉鎖空間暮らしで倫理観が変容してしまった連中の面白おかしいこと。反乱者たちの行く手を阻む武装覆面防衛隊は、壮絶な白兵戦の最中にふと手を止めてカウントダウンを始める。何が起こるのかと思った次の瞬間「新年おめでとー!」の大合唱……マジですか?学校区画では満面ニッコリの女先生(妊婦)がオルガンを演奏、歌と大袈裟な身振り付きのハチャメチャな歴史授業をチビッ子たちに提供中だ。と、いきなり短機関銃を取り出して乱れ射ち、油断していた反乱グループは哀れハチの巣に……Oh、クレイジー。一刻も早く最前車両に辿り着かねばならないハズのカーティス御一行も、海洋生物セクションの寿司屋で赤身の握りを買い食い(おい、遠足かよ?)。醜悪なブスメイクとビン底メガネで狂える総理大臣に扮したティルダ・スウィントンなど谷岡ヤスジの漫画キャラとドッコイいい勝負、他の映画に出演している時のクールな雰囲気をカケラも感じさせないゲスっぷりが素敵だ。

そしてダメ押しはジュノ監督作『グエムル-漢江の怪物-』(06年)でも親子を演じたソン・ガンホ&コ・アソンの投入。雪国超特急の施錠システム設計者にしてヤク中、朝鮮語で何だかんだとボヤきつつ、お花畑に片足突っ込んだようなラリ脳でホイホイとロックを解除していくガンホ(と書いて「アニキ」と読む)は良い意味で遠慮が無く、相変わらずカッコいい。どの国の資本で映画を撮ってもアニキはアニキ、どこまでもシバルラマでセッキャなワガママ顔面力である。希釈不可能なコリアン魂を持つアニキの前では、さしものクリス・エヴァンスも影が薄くなってしまうほどだ。一方、『グエムル』で華々しい映画デビューを果たしたアソンもいつの間にかイイ塩梅の個性派美人に成長。英語の発音もかなり達者で、今後の国際的活躍を期待させる堂々とした演技で魅せてくれた(ジュノ映画ではいつも顔が泥んこなのがチト気の毒)。

斧や鈍器を多用する戦闘シーンはなかなかにブルータルだし、インパクト大なイテテ描写も(示唆レヴェルのものを含め)結構多い。しかし前述したような素っ頓狂な要素が糖衣として機能し、嫌な後味が尾を引くのを防いでいる。恐怖とユーモア、緊張と緩和が同居した奇妙な世界。たとえ眉間にシワ寄せたキャプテン・アメリカを主役に据えようとも、これは紛う方なきポン・ジュノ作品なのだ。

ここで勧告をひとつ。劇中、貧困層の住民に支給される「プロテインブロック」なる羊羹に似た食い物が登場するのだが、こいつの製造工場が映し出される場面は恐らく、大多数の人にとってトラウマ級の戦慄シーンである。筆者、あまりにアンマリな光景に恐怖を通り越して爆笑してしまった。飯など掻っ込みながら鑑賞しませぬよう、くれぐれも注意されたし。

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年間200本以上の映画を鑑賞する映画ギークがオススメの映画をセレクト!

映画コンシェルジュ 佐藤光
1983年生。映像制作者・ライター。年間200本以上の映画や舞台を鑑賞し、買うCDはサントラばかり、いくら家計が厳しくともDVD・Blu-ray収集を止められない映画バカ。当の本人は「宵越しの銭っこは持たん主義」と涙目で強がっている。

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