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Published on 12月 24th, 2015 | by ダッド編集部

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映画ギーク佐藤光の「クリード チャンプを継ぐ男」レビュー



この記事の執筆者は、映画ライターの佐藤光さんです。 ダッド|育児ジェントルへ、プロがエスコート

映画ライターが語る、映画「クリード チャンプを継ぐ男」感想

[2015年 監:ライアン・クーグラー 出:マイケル・B・ジョーダン]

継承される「虎の目」

当コーナーVol.43『ロッキー・ザ・ファイナル』(06年)紹介記事の最後で軽く触れていた、『ロッキー』シリーズ新章が早くも劇場公開となった(該当記事では「アポロの孫が云々……」とホザいておりますが、「息子」の間違いですね。筆者痛恨の大チョンボ……しかし敢えて訂正はいたしません。恥は恥として残しましょう!)。前作のエキシビジョン・マッチで胸中のモヤモヤを全て吐き出し、「完全燃焼」というモノノフの本懐を遂げた元ヘビー級ボクシング・チャンピオン、ロッキー・バルボア。今回はそんな彼の前に、拳闘人生最大のライバルにして掛け替えのない友であったアポロ・クリードの息子アドニスが現れる。夫婦円満に見えて実は外でオイタをしていたアポロ(テメェこの野郎!)。非嫡出子として生まれ、父親の顔を見ることなく育ったアドニスにボクサーとしての可能性を感じたロッキーは、アドニスから依頼されたトレーナー役を引き受け、二人で頂点を目指して過酷な特訓を開始するのだが……。

振り返ってみればロッキー、後進の養成には何かとしくじりも多かった。『ロッキー5/最後のドラマ』(90年)では手塩にかけて育てたボクサー、トミー・ガンを悪徳プロモーターに横取りされ、倅のロバートは大きすぎる親父の存在にコンプレックスを刺激されてか、ボクシング道を進むことなく故郷を去った(ちなみに『5』でロッキー・Jr.を演じたスタローンの実子セイジは2012年に心臓発作で死去)。名選手が必ずしも優れた指導者になれるとは限らない。こんな時にミッキーがいてくれたら……だが、一時はヤクザの使い走りに身を窶していたロッキーに闘魂を注入してくれた名トレーナー、ミッキーも既に故人。そして『ザ・ファイナル』から本作の間に、お参りする墓がまた一つ追加されてしまった……愛する者の多くを失ってしまったロッキー自身、近頃は体の調子がどうもすぐれない。愛妻エイドリアンの墓前に花を添えるロッキー=スタローンの背中は、過去作では見たことがないほど「老い」が強調されており、小さく、弱々しい。

そんなフェードアウト寸前だった「イタリアの種馬」のファイティング・スピリットに火を灯すのが、本作の実質的な主役であるアドニスだ。彼もまた、天才プロボクサーだった父アポロの巨大な栄光に悩まされ続け、「クリード」の姓を封印して自己の存在を証明しようとあがく苦悩のファイターである(物語序盤、YouTubeでロッキーとアポロの熱戦を観ていたアドニスがシャドー・ボクシングを始める場面、スクリーンに投影された父と「戦う」息子の姿は実に象徴的だ)。父親譲りの図抜けた格闘センスを持ってはいるが精神・技術面はまだまだ未熟なアドニス。このダイヤの原石に磨きをかけ、亡き盟友の名に恥じぬ立派な戦士として完成させることこそ、老兵ロッキーに課せられた最も困難かつ至上の使命となる。一度は失敗した後継者の育成、自分の息子には(少なくともボクシングという形では)渡し損ねてしまった夢のバトン……かつてアポロとの二人三脚で取り戻した「アイ・オブ・ザ・タイガー」を新たな世代に継承させるべく、満身創痍の種馬は再び立ち上がるのである。

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弱冠28歳にして超人気シリーズの監督を任されたライアン・クーグラー監督は、若手監督らしい荒削りな部分も残しつつ力感あふれる確かな手腕で物語をグイグイ引っ張る。特に印象的なのは長回し撮影の絶妙な使いどころ。中盤、2ラウンドをノーカットで追い続ける試合シーンではパンチを繰り出すアドニスに超接近したカメラワークで観客を戦いの真っ只中へと放り込み、ラストの決戦直前には控室からリングへと向かうアドニスを延々と捉え続けることで、大舞台に乗り込むルーキーの心情を観る者のそれと見事にシンクロさせてみせる。単なるテクニックのひけらかしなどではない、まさに長回しのお手本のような名場面だ。

前6作品でシナリオを担当したスタローンから脚本クレジットを引き継いだクーグラー監督&アーロン・コヴィントンによるストーリーは、『ロッキー』の古典的なムードと瑞々しい感性がうまくマッチングしているし(コヴィントンにとっては、なんとコレが長編映画脚本デビュー作)、ブラックミュージックの要素も多く取り入れた音楽は、過去作におけるビル・コンティの勇壮なスコアとはまた一味違った新鮮な魅力を持つ(あのアゲアゲなテーマ曲がチョビッとしか流れないのは少々残念だが、あれはやっぱりロッキーのものだしね)。映画の中のみならず製作現場においても、「継承」というテーマはしっかりと作用していたようである。

超大作・話題作がひしめき合う12月の劇場。筆者が本作鑑賞のために足を運んだシネコンでは、強力な競合作品にお客が流れたためか『クリード』上映スペースには空席が目立っていた(初日なのに……グスン)。だがよくよく見てみると、来場者の年齢層が広いこと広いこと。小学校低学年生らしきチビッ子、歩くのも難儀そうなお年寄り、中には明らかにロッキーのファッションや歩き方を真似ていると思しきナイスミドルまでいた(しかも数人)。シリーズ開始から早40年、映画を取り巻く環境は幾多の変遷を経てきた。栄光は時と共に色褪せ、世代は移り変わっていく。でもロッキー、貴方は決して「過去の遺物」などではありません。たとえリングを降りようとイタ飯屋の主人になろうと、貴方に一目会いたいと願うファンは確かに存在するのだから……劇場からの帰り道、駅へと続く昇降用通路をフィラデルフィア美術館の正面階段「ロッキー・ステップ」に見立てて上りながら、ちょっと胸が熱くなった。

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映画コンシェルジュ 佐藤光
1983年生。映像制作者・ライター。年間200本以上の映画や舞台を鑑賞し、買うCDはサントラばかり、いくら家計が厳しくともDVD・Blu-ray収集を止められない映画バカ。当の本人は「宵越しの銭っこは持たん主義」と涙目で強がっている。

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