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Published on 1月 25th, 2016 | by ダッド編集部

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映画ギーク佐藤光の「ブリッジ・オブ・スパイ」レビュー



この記事の執筆者は、映画ライターの佐藤光さんです。 ダッド|育児ジェントルへ、プロがエスコート

映画ライターが語る、映画「ブリッジ・オブ・スパイ」感想

[2015年 監:スティーヴン・スピルバーグ 出:トム・ハンクス、マーク・ライランス]

昼間のパパは男だぜ

1957年。ソ連との冷戦が続くアメリカで、スパイ容疑をかけられた画家のルドルフ・アベルがFBIに逮捕された。彼の弁護を依頼されたジェームズ・ドノヴァンは、有事の際の切り札として敵国スパイを生かしておくことの重要性を説き、極刑が確実視されていたアベルの減刑を成功させる。その数年後、ソ連上空でU-2偵察機が撃墜され、パイロットは身柄拘束。捕虜交換の交渉のために東ドイツへと向かうドノヴァンだったが、折悪しくアメリカ人留学生が東独秘密警察によって逮捕されてしまう。ソ連スパイ1人とアメリカ人2人の交換……手札の不足を理詰めとブラフで補いながら、2つの国を相手に孤独な交渉戦を進めていくドノヴァンだが……。

傑作『ミュンヘン』(05年)でも、007が裸足で逃げ出すほどの陰惨なスパイ戦を描いてみせたスピルバーグ監督だが、今回は鮮烈なアクションもドンパチも封印。眉間にシワ寄せたオッサンたちが、寒そうな室内で膝を突き合わせてひたすら談合する。主役の大スター、トム・ハンクスを除けば出演陣もひたすら地味。ソ連スパイのアベルにしてからが、パンツ一丁で自室をウロウロする禿げ散らかした中年オヤジである(マーク・ライランス、好演)。ヤヌス・カミンスキー撮影監督によるモノクロ映画一歩手前まで色を抑えた映像の効果も手伝って、画面内に漂う寂寞感がハンパなものじゃないのだが、それらはあくまで見た目の話。ポーカーフェイスをきめこむ登場人物たちの腹の内では、冬のベルリンに降り積もった雪も溶かすほど激アツな人間ドラマが人知れず、しかし着々と進行していく。

例えばドノヴァンが家の外で何をしているのか、それは彼の家族にとっても謎だ。いや、弁護士という職に就いていることは周知の事実なのだが、その内容について詳しく知る術も機会も、妻子にはない(映画に限った話ではなく、我々が暮らす現実世界にもこれが当てはまる場面は結構ある)。彼らにとって「昼間のパパ」は秘密のヴェールに包まれた存在。敵国のスパイを弁護することで世間から被る白眼視も、ファミリーの信頼を拠り所として耐え忍ぶしかないのだ。

ドノヴァンにも、コミュニズムに対する恐怖心でヒステリックなまでに高まった民衆からの野次にいちいち反応している余裕などない。「正義は全ての者のために」という思いを胸に、西へ東へひたすら奔走するのみ。体裁を気にするアメリカ政府に交渉への介入を断られても、異国のチンピラにコートをカツアゲされても、彼の理想主義スピリットは決して萎えることがない。橋の上で行われる人質交換がハイライト、なんていう地味地味映画がちゃんとエンタメ作品として成立しているのは、スピルバーグ映画のキモであるヒューマニズム精神がここでもちゃんと機能している証拠であろう。

だからクライマックス、何の気なしにテレビを眺めていたドノヴァン一家が「ある真相」を知り、これもスピルバーグ作品にしばしば登場する「何かとんでもないものを目撃した時のビックリ顔」を浮かべる瞬間は、どんなスペクタキュラーな場面にも負けないほどのカタルシスに満ちており、思わずゾクリとさせられる。「昼間のォ~パパはァ~、オトコだァぜェェェ~!」……本作鑑賞翌日にこのシーンを思い返した時、忌野清志郎が歌う『パパの歌』のフレーズが脳裏に浮かび、つい顔が綻んだ筆者なのでありました。

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映画コンシェルジュ 佐藤光
1983年生。映像制作者・ライター。年間200本以上の映画や舞台を鑑賞し、買うCDはサントラばかり、いくら家計が厳しくともDVD・Blu-ray収集を止められない映画バカ。当の本人は「宵越しの銭っこは持たん主義」と涙目で強がっている。

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