【DL終了】AppStoreからもGoogle Playからも削除された「卒論 ゲスの極みと恋する乙女の恋愛物語」をネタバレ!【完全版】
二人の約束
ソファの上のぬいぐるみが、静かにこっちを見ている。嫉妬してる?ごめんね。私は今、幸せなんだ。画面越しのみんながくれる幸せとは、まったく別の物なんだよ。
「変わる心に同様なんてして」
「明日を悟って目を瞑る。悪くないの」
「私以外は私じゃないって」
「報われない気持ちもしまって、生きて」
あれは、私だ。私なの。
あの歌は私なんだ。
彼が歌う、私にとっての、私だけの歌・・・。
ケンちゃんと二人だけでこのお店に来るのは何回目だろう・・・。
両手で数えきれなくなってきた。
お酒飲んで、写真を撮って、キスもした・・・。
それでも全く飽きる気がしないのはどうしてなのかな。
恋とか愛とか、そんな言葉は世界中のどこにでも溢れ返っている。
世の中のみんなが、こんな幸せを当たり前に感じているのかな。
それって凄いなあ。
本当の幸せって、こういう気持ちの事をいうんじゃないかな。
この気持ちを、ファンのみんなと丸ごとシェア出来たらいいのに!
「ケンちゃん、来月はクリスマスがあるけど、二人でディズニーとか行ってみない!?ホテルも私予約するよ!」
「クリスマスにディズニーかあ」
「ってかケンちゃんディズニーとか行ったことある?」
「もちろんあるよ。」
「じゃあなんでそんなに気が乗らないの?・・・。」
「もしかして去年のクリスマスに前話してた昔の彼女さんと行ったとか?」
「それはない。けどクリスマスは仕事で忙しいかもしれないなぁって。スケジュール確認して来週中には決めよう。」
「分かった!ハッピーなクリスマスを過ごせるようにサンタさんにお願いしておくね。」
私はその日から毎日、プラスの言葉だけを言い続けた。
プラスの言葉を発した分だけ人生の中での笑顔の数は増えると思うから。
それから三日も経たず、ケンちゃんからドライブの誘いが来た。
私たちはドライブしながら海まで車を走らせた。
食事が終わって、海沿い小道を散歩しながら、
ケンちゃんが唐突に私に告げた。
「エリちゃん、クリスマス一緒に過ごそう。」
私はいつもと違うケンちゃんの様子から少しネガティブな返事がくるかと思っていた。
「やったー!サンタさんからの少し早いプレゼントだ!」
「ただもう一つ言わなくちゃいけない事があるんだ・・・。」
「実は・・・オレ・・・」
「結婚しているんだ。」
「!!・・・。」
言葉にならなかった・・・。
ただただ・・・
目が霞んだ。
「けどオレはエリの事を好きで愛している。これは本当なんだ・・・。」
「だから、離婚が成立するまで、待っててほしい。」
「・・・。」
「ケンちゃん、ちゃんと反してくれてありがとう。けど今日はもう一人になりたい。」
私はそう言い残し、一人で駅に向かった。
つらくても笑顔。
悲しくても笑顔。
苦しくても笑顔。
・・・たまに一人で涙。
どんな出来事も良い面と悪い面がある。
どんな悲しい出来事にも絶対にプラスポイントがある。
そこを見つけていくってこと、大切ですか?
翌朝、私はいつも通りの時間に起きて、スタジオへ行き、順調に収録を終えた。
楽屋に戻って、スマホを取り出す。
もう習慣になっている。
イヤホンの向うで・・・が歌う。
何も考えずにスマホから流れてくる音の波。
このまま私も音になってしまいたいな。
汚れも過ちもなにもない世界で、ずっと彼の傍にいたい。
どんなに悔やんでも過去は変えられない。
どんなに頑張っても過去には戻れない。
だったらもう前を向いて歩くしかない。
この気持ち、もう止まらない。もう終われない。
私はLINEでメールをしていた。
「私からのお願い・・・。ひとつだけ・・・。」
「私の誕生日、3月6日までに、奥さんの事、はっきりして欲しい・・・。」
両膝を抱え込んで、丸くなって、屈みこんだ。
スマホが鳴る。
彼からの返事だ。
画面を開く私の指は震えていた。
「この思い受け止めてくれてありがとう。エリの誕生日3月6日までに妻からは・・・卒業する。」
それからも連絡を取り、ケンちゃんは離婚の話を進めてくれている様子だった。
「話し合いしてた。感情的になってしまうから。時間かかってしまうけどちゃんと卒論書くから待っててほしいな」
「こんな感じで待たせるのは本当に心苦しいけど、待っててほしい。」
ポジティブに考えたい。そして私は強がった。
「大丈夫だよ!判ってる!卒論提出できたら、ケンちゃんにいっぱいワガママ効いてもらおうっとー!笑」
そんな連絡をし、時間がある限り会い、月日は経ちクリスマスを迎えた・・・。
クリスマスの夜、私とケンちゃんは約束をしたディズニーで楽しんだ。二人だけで。
イルミネーションの煌めくナイトショーを見ながら、何度も愛を誓って、キスをした。
ホテルに戻ると、ケンちゃんが少し照れくさそうに、真っ白なプレゼント箱を私にくれた。
金色のリボンをそっと引っ張ると、箱の中から
新作のボリードのハンドバッグが顔を出した。
これ、100万円以上する超レアなバッグなんだけど。
「俺は愛ってお金じゃいないと思うんだ。でも好きな女の子には、笑ってほしい。なんでもしてあげたいって思うんだ。
「ありがとう・・・うん、愛って、お金じゃないよね。」
私は心からそう思った。
「ケンちゃんが一生懸命、私の為にプレゼントを選んでくれたのかなって、私、そこが嬉しいんだ。」
「私、これ、壊れるまでずっと使う!」
「ごめん、しっかり作られた高級品だから、多分一生こわれないよ」
ケンちゃんが笑う。
「私たちの関係みたいに?」
ケンちゃんが、笑うのをやめた。そして私の背中に手を回すと、もう一度、そっと優しくキスをしてくれた。
その夜、私たちはリゾートの中にある、一番大きなホテルの最上階のスイートルームで・・・
一夜を明かした・・・。
猟奇的なキスを私にして、最後まではなさないで・・・。
駆け抜けるように師走は去って、
窓から見える山の向うから、年明けの鐘が鳴った。
ケンちゃんから、当たり前のように、正月長崎へおいでと誘われていた。
私も、当たり前のように、ケンちゃんにくっついて長崎に来た。
空港から二人で車に乗り込んだ。
向う先はケンちゃんの実家だ。
車を降りて、玄関に向かう。
ご両親にしっかり挨拶をしよう。
私は今、満たされている。
そうきっと、世界中の誰よりきっと・・・。
・・・その時。
知らない男性から声をかけられた。
「週刊文春のものですが、エリさんですよね!ケンタさんとはげんざいどういうご関係ですか!?」
私はとっさに「事務所を通してください!」
と声が出ていた。
「ケンタさんは、○○さんをご存じですよね?どういったご関係ですか?」
「名前は知ってます・・・。友達です・・・。」
どうしよう・・・わたしたちもしかして・・・