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Published on 5月 23rd, 2016 | by ダッド編集部

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映画ギーク佐藤光の「フォーリング・ダウン」レビュー



この記事の執筆者は、映画ライターの佐藤光さんです。 ダッド|育児ジェントルへ、プロがエスコート

映画ライターが語る、映画「フォーリング・ダウン」感想

[1993年 監:ジョエル・シュマッカー 出:マイケル・ダグラス、ロバート・デュヴァル]

ガス抜きも大事です

猛暑のロサンゼルス。大渋滞に巻き込まれた車から一人の中年男が降り立ち、歩き出した。行く先々で様々なトラブルに見舞われる男だったが、日々のストレスで精神が限界に達していた彼は圧倒的暴力でそれらに対抗、眼前に立ちはだかる障害物を打ち壊しながら、ただひたすらに「目的地」を目指す。老刑事プレンダガストは、街なかで次々と発生する事件に奇妙な共通項を見出し、長い刑事人生の最終日に犯人の追跡を開始するのだが、犯人=中年男の「怒りの暴走」は、もはや取り返しのつかないレベルにまでエスカレートしていた……。

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本作の主人公……車のナンバープレートに記されたスローガンから“D-フェンス”と呼称されることになるこの中年男は、つくづく気の毒な男だ。軍需工場で身を粉にして働いていたところ、人員削減の憂き目にあって敢え無くクビに。女房子どもは彼のもとを去り、養育費もロクに払えない。幸せが指の間からこぼれ落ちていく一方で、厄介事は向こうからドンドンやってくる。クソッ、やってらんねぇぜ!朝からの暑さ、渋滞、エアコンの故障……車内をうるさく飛び回るハエがダメ押しとなって、Dサンついにプッツン切れる。「もう、我慢するのヤーメた!!」……車を捨てて歩き旅、道中で難癖つけてくるゴロツキ共を撃退し続けていたら、いつの間にやら手もとには大量の武器が。図らずも武装失業者となってしまったD-フェンスは、世の理不尽に容赦なく天誅を加える「ストレスフル・ヒーロー」として転生するのである。

劇中に登場するD-フェンスの母親の挙動や、ホームビデオの断片的な映像を見るかぎり、彼の中にはもともと闇があった。
基地の外、とまでは言わないが、一般ピープルよりもかなり危うい心を抱えていたことは間違いない(どうやら生来のイラチでもあったようだし)。そんな男を主役に据えているのに、どうしてこうも感情移入が容易なのだろう?それはD-フェンスにとってのイライラ要因が、我々の日常生活に転がっているソレらと見事に合致しているからだ。

店員の勤務態度が最低なコンビニ、メニュー写真とはまるで別物のショボいランチセットを平気で出すファストフード店、予算消化のための無駄な道路工事……どれもこれもアクビが出るほど普遍的、それでいて苛立たしいこと此の上ない。そしてこのテの組織の威を借る眷属どもは、いくら口頭で非を打ったところで真面目に取り合ってもくれないことがしばしば。そんな連中の注意を引くため、D-フェンスは懐の銃をチラつかせる。『セブン』(95年)でジョン・ドゥも言っていた。「他人に話を聞いてほしければ、肩を軽く叩いてもダメだ。ハンマーを使え」と。もちろん、現実の民主主義社会で暴力は御法度であり、行使すればお縄を食らってしまうことだってある(たとえそれが、情状酌量の余地おおいにアリ、と思えるような事例だったとしてもだ)。だからこそ、フィクションの器を借りて義憤のウルトラ・バイオレンスを炸裂させるD-フェンスに対し、我々は誰にも憚らず自己を投影し、遠慮なく喝采をおくることができるのである。

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破滅型だが魅力的なD-フェンスと比べて、抑圧一辺倒なプレンダガスト刑事の惨めさときたらどうだ。白バイ警官には邪険に扱われ、生意気な後輩からは「事務屋」呼ばわり。更年期障害を発症したカミさんは、くだらない私用電話を引っ切り無しに掛けてくる。観ているコッチまで胸クソ悪くなるような雑な扱いを受けているのに、当の本人はいつもニコニコ、ニコニコと仏の笑顔。こんなの健やかじゃねぇッスよ、オヤジさん。ロバート・デュヴァルがこんな役を演じるなんて、『地獄の黙示録』(79年)最大の旨味ポイントだったキルゴア騎兵師団のエンブレムが泣きますぜ……自分の親の悪口言われたようなゲンナリ気分で映画を観続けてい・た・ら。D-フェンスの明け透けすぎる世直し大明神ぶりに刺激されたか、我慢無双プレンダガストのカマドにもついに怒りの火がついた。カミさんを一喝!後輩に鉄拳!プレンダガスト、あなたは今、長い勤続人生の中で一番輝いている(心もアタマも)!!しかしまぁ、あるとき突然ブチ切れて周囲の人間をドン引きさせるような事態を回避するためにも、やはり常日頃からのこまめなガス抜きは必要ってことですね、お父さん。

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年間200本以上の映画を鑑賞する映画ギークがオススメの映画をセレクト!

映画コンシェルジュ 佐藤光
1983年生。映像制作者・ライター。年間200本以上の映画や舞台を鑑賞し、買うCDはサントラばかり、いくら家計が厳しくともDVD・Blu-ray収集を止められない映画バカ。当の本人は「宵越しの銭っこは持たん主義」と涙目で強がっている。
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